映画『貞子VS伽倻子』感想2016-06-19(Sun)
公開初日に見に行ってきました。白石監督は『ノロイ』『カルト』『コワすぎ』などで好きな監督さんだったのですが、劇場で作品を見るのははじめてだったのでワクワクドキドキ。
「貞子vs伽椰子」はハートフル百合ムービー 白石晃士・金田淳子「貞子vs伽椰子」そして「コワすぎ!」を語る
映画「貞子 vs 伽椰子」白石晃士監督にインタビュー:裏テーマは「Jホラーをぶっ壊す」
・貞子と伽倻子
上記のインタビューで白石監督自身が述べている通り、今作での貞子と伽倻子は設定をかなり省かれていて、特に本来の設定が複雑な貞子にそれが顕著です。
伽倻子は怨霊と化した経緯に一応の言及はありますが、貞子は「呪いのビデオを見ると出てくる幽霊」以上の説明はなく、なぜあんなビデオが存在するのかも語られません。
貞子は伽倻子に比べもともとシステマチックな幽霊で、原作の小説においても生い立ちや能力などは詳細に掘り下げられているものの、内面についてはほとんど言及がなかった気がする(『らせん』『ループ』は読んでいないのでそちらであったらごめんなさい)ので、それが先鋭化したと言っていいかもしれません。
初代で見事なアンサーだと感じた「ダビングして人に見せれば助かる」が今作でただの噂と切り捨てられてたのはちょっとしょんぼりしないでもないけど、それで済んじゃったら対決にならないですからね。
ヒロインがシャワーを浴びていると頭上から髪の毛が降ってくるという、いずれ呪い殺す相手に嫌がらせをするホラー映画の怪異がよくやるアレは貞子のイメージと大きくずれているように思えるけど、アレは霊能者が介入してくるというこれまでの対象にはなかった行動をしたことでなにか変化が生じたのですかね。
いやまあ、もともとの劇場版『リング』でも呪った相手の写真を歪ませたり超能力者とはいえ高山竜司の前に姿を見せたりはしていたけれど。
伽倻子の方はおおむね旧来(自分が触れた『呪怨』シリーズ作品はビデオ版と劇場版初代、小説版の1、2だけですが)のイメージ通り。
呪いの家と接点のなかった人物を家に誘い込もうとする理不尽さも健在だし、序盤のいじめられっ子がいじめっ子3人を呪いの家に引き込むくだりはフィクション的にいじめっ子は少なくともその場では逃れるんじゃないかと思ってたんですが、平等に4人ともお馴染みの異界に引きずり込むやり方で殺していてさすがだなあと感じました。
・霊能者・法柳と経蔵
白石監督作品には多くの霊能者が登場し、たとえ力及ばずとも依頼人のために最善を尽くすなど総じて有能なんですが(『ノロイ』の堀さんは有能と言っていいのか怪しいけど)、今作に登場する霊能者・法柳さんと安藤政信演じる常磐経蔵もそれに漏れず。
「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」でお馴染み(?)の経蔵さんは単体でも伽倻子と俊雄を一時退け貞子の髪の毛を逃れるほどの実力者ですが、法柳さんも無能ではない、少なくとも霊能者としては誠実な人物という印象を与えます。
採取した貞子の髪を袋詰にして対伽倻子の呪具にするあたりとかもう完全に『コワすぎ』のアレだし、ファンサービスみたいなものじゃないかと思うんですが、法柳さんが唱えていた経文(?)が『カルト』に出てきたのと同じだったのは、もしかして設定上の繋がりがあることを示唆しているのかな、とも。
経蔵さんはNEO様と似た粗暴な雰囲気だけど強くてイケメンの霊能者ですごく漫画的なキャラクターなんですが、相方の(恐らくは)感知系能力者の少女・珠緒ちゃんもすごく二次元力高いですね。
白石監督作品、霊能者がみんな魅力的だけど背景には特に触れられない(バッググラウンドが重視されたのは『コワすぎ』の鈴木くらい?)あたりも妄想を掻き立てていいんだよなあ。ワクワクするツボをわかっている感じで、ホラーに限らずエンタメ的なキャラ作りの才能がある人なんでしょう。
あと、ヒロインの大学の先生である森繁さんは別に霊能者でもなんでもないオカルト研究者なんだけど凄まじいキャラで、『コワすぎ』に積極的に投稿してきて工藤に実験台にされて死んでも悔いなさそうだなあと。
・貞子VS伽倻子
タイトルにもなっているJホラーの双巨頭の対決ですが、実現するのは終盤、時間にして15分もないんじゃないかと思います。
でも大満足。それぞれ呪われたヒロイン2人が呪いの家でビデオを再生し、両者が姿を現し、互いに物理的にも絡み合い……という流れから結末に至るまで大盛り上がりで。
ラストのアレとか絵面がヤバすぎて正直笑っちゃうんだけど、でもアホ臭いとかそういうんじゃなくて、いや絵面はバカみたいだけど、でも流れの中でしっかり大マジになっている。
終盤は特にそうですが、序盤から展開がハイスピードで面白くて、まあ実際そうしないと尺が足りないからなんだろうけど、全体に緊張感ある映画になっていました。
いわゆるJホラーは「アメリカのモンスターパニック的なホラーとは異なり、露骨に姿を現さず淡々とした恐怖を描いている」みたいな評価を受けることがありますが(この評価がどこまで的を射ているのかは置いといて)この映画は完全に前者のタイプの作品だと思います。
ギャーギャー騒いで(劇場ではお静かに)盛り上がって満足感を得られるエンタメホラー映画の傑作。
実は……公開初日なのに劇場がガラガラで、興行収入に一抹の、いや大きな不安を覚えたので、興味をお持ちの方はぜひ足を運んでもらえればと思います。劇場の大画面と音響で見て欲しい映画だよ。あと、聖飢魔IIの主題歌がかっこいい。
「貞子vs伽椰子」はハートフル百合ムービー 白石晃士・金田淳子「貞子vs伽椰子」そして「コワすぎ!」を語る
映画「貞子 vs 伽椰子」白石晃士監督にインタビュー:裏テーマは「Jホラーをぶっ壊す」
・貞子と伽倻子
上記のインタビューで白石監督自身が述べている通り、今作での貞子と伽倻子は設定をかなり省かれていて、特に本来の設定が複雑な貞子にそれが顕著です。
伽倻子は怨霊と化した経緯に一応の言及はありますが、貞子は「呪いのビデオを見ると出てくる幽霊」以上の説明はなく、なぜあんなビデオが存在するのかも語られません。
貞子は伽倻子に比べもともとシステマチックな幽霊で、原作の小説においても生い立ちや能力などは詳細に掘り下げられているものの、内面についてはほとんど言及がなかった気がする(『らせん』『ループ』は読んでいないのでそちらであったらごめんなさい)ので、それが先鋭化したと言っていいかもしれません。
初代で見事なアンサーだと感じた「ダビングして人に見せれば助かる」が今作でただの噂と切り捨てられてたのはちょっとしょんぼりしないでもないけど、それで済んじゃったら対決にならないですからね。
ヒロインがシャワーを浴びていると頭上から髪の毛が降ってくるという、いずれ呪い殺す相手に嫌がらせをするホラー映画の怪異がよくやるアレは貞子のイメージと大きくずれているように思えるけど、アレは霊能者が介入してくるというこれまでの対象にはなかった行動をしたことでなにか変化が生じたのですかね。
いやまあ、もともとの劇場版『リング』でも呪った相手の写真を歪ませたり超能力者とはいえ高山竜司の前に姿を見せたりはしていたけれど。
伽倻子の方はおおむね旧来(自分が触れた『呪怨』シリーズ作品はビデオ版と劇場版初代、小説版の1、2だけですが)のイメージ通り。
呪いの家と接点のなかった人物を家に誘い込もうとする理不尽さも健在だし、序盤のいじめられっ子がいじめっ子3人を呪いの家に引き込むくだりはフィクション的にいじめっ子は少なくともその場では逃れるんじゃないかと思ってたんですが、平等に4人ともお馴染みの異界に引きずり込むやり方で殺していてさすがだなあと感じました。
・霊能者・法柳と経蔵
白石監督作品には多くの霊能者が登場し、たとえ力及ばずとも依頼人のために最善を尽くすなど総じて有能なんですが(『ノロイ』の堀さんは有能と言っていいのか怪しいけど)、今作に登場する霊能者・法柳さんと安藤政信演じる常磐経蔵もそれに漏れず。
「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」でお馴染み(?)の経蔵さんは単体でも伽倻子と俊雄を一時退け貞子の髪の毛を逃れるほどの実力者ですが、法柳さんも無能ではない、少なくとも霊能者としては誠実な人物という印象を与えます。
採取した貞子の髪を袋詰にして対伽倻子の呪具にするあたりとかもう完全に『コワすぎ』のアレだし、ファンサービスみたいなものじゃないかと思うんですが、法柳さんが唱えていた経文(?)が『カルト』に出てきたのと同じだったのは、もしかして設定上の繋がりがあることを示唆しているのかな、とも。
経蔵さんはNEO様と似た粗暴な雰囲気だけど強くてイケメンの霊能者ですごく漫画的なキャラクターなんですが、相方の(恐らくは)感知系能力者の少女・珠緒ちゃんもすごく二次元力高いですね。
白石監督作品、霊能者がみんな魅力的だけど背景には特に触れられない(バッググラウンドが重視されたのは『コワすぎ』の鈴木くらい?)あたりも妄想を掻き立てていいんだよなあ。ワクワクするツボをわかっている感じで、ホラーに限らずエンタメ的なキャラ作りの才能がある人なんでしょう。
あと、ヒロインの大学の先生である森繁さんは別に霊能者でもなんでもないオカルト研究者なんだけど凄まじいキャラで、『コワすぎ』に積極的に投稿してきて工藤に実験台にされて死んでも悔いなさそうだなあと。
・貞子VS伽倻子
タイトルにもなっているJホラーの双巨頭の対決ですが、実現するのは終盤、時間にして15分もないんじゃないかと思います。
でも大満足。それぞれ呪われたヒロイン2人が呪いの家でビデオを再生し、両者が姿を現し、互いに物理的にも絡み合い……という流れから結末に至るまで大盛り上がりで。
ラストのアレとか絵面がヤバすぎて正直笑っちゃうんだけど、でもアホ臭いとかそういうんじゃなくて、いや絵面はバカみたいだけど、でも流れの中でしっかり大マジになっている。
終盤は特にそうですが、序盤から展開がハイスピードで面白くて、まあ実際そうしないと尺が足りないからなんだろうけど、全体に緊張感ある映画になっていました。
いわゆるJホラーは「アメリカのモンスターパニック的なホラーとは異なり、露骨に姿を現さず淡々とした恐怖を描いている」みたいな評価を受けることがありますが(この評価がどこまで的を射ているのかは置いといて)この映画は完全に前者のタイプの作品だと思います。
ギャーギャー騒いで(劇場ではお静かに)盛り上がって満足感を得られるエンタメホラー映画の傑作。
実は……公開初日なのに劇場がガラガラで、興行収入に一抹の、いや大きな不安を覚えたので、興味をお持ちの方はぜひ足を運んでもらえればと思います。劇場の大画面と音響で見て欲しい映画だよ。あと、聖飢魔IIの主題歌がかっこいい。
貞子VS伽椰子 (角川ホラー文庫)
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